租税法制上,法定申告期限後も,更正請求期間 内は,法定の更正の請求の手続による限り,課税の根拠となった遺産分割 の要素の錯誤による無効を理由とする相続税額の減額更正が手続的に許容 - 27 - されていることにかんがみると,法定申告期限までに課税庁に生じた申告 内容に対する信頼や租税法律関係の早期確定の要請等を勘案しても,なお, その無効の主張の制限について,更正請求期間内にされた更正の請求にお ける上記の限度での例外を許容し得ないとまでは解し難い。
(3) そこで,原告P3について,上記の特段の事情の有無を検討する。
アまず,上記(2)?についてみるに,(a)前提事実(4)ア及び(5)イ(ア)の とおり,原告P3は,平成15年6月19日,第1次遺産分割に基づき, 相続税の申告をし,その約5か月後の同年11月6日に,株式の分割の 錯誤(本件会社の株式の配分数の錯誤)を理由として,更正の請求をし ており,更正請求期間内(同年6月24日の法定申告期限から1年以内) に,第1次遺産分割のうち本件会社の株式の配分に係る部分の錯誤によ る無効を理由として,国税通則法23条1項1号の規定による更正の請 求をしたものと認められ,また,(b)原告P3は,課税庁の調査時の指 摘,修正申告の勧奨,更正処分等を受ける前に,いまだ税務調査も始ま っていない段階で,相続人らが自ら課税負担の前提事項の錯誤があるこ とに気付いたため,上記更正の請求をしたのであり,更正処分がされた のも,更正の請求の日から約1年後の平成16年11月19日であった ことが認められるので,本件は上記(2)?に該当するものと認められる。
イ次に,上記(2)?についてみるに,原告P3が第1次遺産分割により取 得した経済的成果は,一定数の本件会社の株式の帰属であるが,第1次 遺産分割のうち本件会社の株式の配分に係る部分が無効であり,更正請 求期間内に,原告P3の取得する本件会社の株式数を減ずる内容の第2 次遺産分割がされたことにより(なお,同期間内に,これに基づく本件 会社の株式名簿の名義書換えもされた。
),更正の請求の時点では,その 減少分の株式は原告P1及び原告P4に確定的に帰属するに至っており, 当該減少分の株式(15万4024株)につき,第1次遺産分割による - 28 - 原告P3の経済的成果は完全に消失しているものと認められるので,本 件は上記(2)?に該当するものと認められる。
ウさらに,上記(2)?についてみるに,前提事実及び上記1(1)の認定事 実によれば,(a)上記1(2)のとおり,本件会社の株式の評価に係る配当 還元方式の適用は,その適用の有無により評価額に合計約19億円の差 異が生ずることから,遺産分割における重要な条件として当初から相続 人らの間で明示的に協議されていた事項であり,相続人らが当該株式の 評価方法を誤信して第1次遺産分割の合意に至ったのは,本件税理士の 誤った助言に起因するもので,事柄の内容も税務の専門家でない相続人 らにとって同税理士の助言の誤りに直ちに気付くのが容易なものとはい えないものであったこと,(b)遺産分割の協議に際して,相続人らは, 第1次遺産分割に基づく当初の申告を経て,自らその誤信に気付いた後, 速やかに,配当還元方式の適用を受けられる内容に当該株式の配分方法 を変更した第2次遺産分割の合意に至っていることが認められ,これら の経緯に照らすと,第1次遺産分割から第2次遺産分割への分割内容の 変更は,やむを得ない事情により誤信の内容を是正する一回的なもので あったと認められ,本件は上記(2)?に該当するものと認められる。
エ以上によれば,前記認定の事実関係の下では,本件は上記(2)?ないし ?のいずれにも該当し,更正の請求において課税負担の前提事項の錯誤 を理由とする遺産分割の無効の主張を認めても上記(2)の弊害が生ずるお それがなく,申告納税制度の趣旨・構造及び租税法上の信義則に反する とはいえないと認めるべき特段の事情がある場合に該当するものという べきである。
(4)アしたがって,原告P3は,更正請求期間内にした更正の請求において, 処分行政庁に対し,第1次遺産分割のうち本件会社の株式の配分に係る 部分の錯誤による無効を主張することができたものというべきであり, - 29 - これにより当該株式の配分が無効とされる以上,課税の根拠となる相続 財産である当該株式の取得を欠くことになるから,その錯誤による無効 は,国税通則法23条1項1号にいう「当該申告書に記載した課税標準 等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつた こと」との事由に該当するものと解される。
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